【広告代理店】具体的な事例から学ぶ仕事内容

2021年1月17日

はじめに

就活や転職で高い人気を誇る広告業界。

「華やか」「激務」「ブラック」という様々なイメージがある中、具体的な仕事内容については、実際あまり知らないのではないでしょうか?

広告の具体的な仕事内容が分からない

こんな悩みを解決できる記事を用意しました!

本記事では、広告代理店に勤務する筆者が世の中の広告がどのように生み出されるか具体的に説明します。

これを読めば、広告の仕事内容について具体的にイメージが出来ます。

この記事を参考にしていただき、現在の自身に置かれた状況ややるべきことを少しでも理解して頂ければ幸いです!

広告会社の職種は大きく5種類

電通、博報堂といった大手代理店の仕事は、大きく分けると以下5種類になります。

  • 営業
  • メディア
  • マーケティング戦略
  • クリエイティブ
  • プロモーション

各会社は専門の部門があり、それぞれ役割が分かれている場合が多いです。

そして、プロジェクトや案件ごとに部門の担当者がチームを組み広告を創り出していきます。

プロジェクトが世に出るまでの流れ

具体的な仕事内容について詳しく教えて!

それでは広告がどのような流れで生み出されていくのか、具体的な事例で説明していきます。

ケーススタディ
「新商品プロジェクト」

【登場人物場面設定】

  • 広告代理店営業マン:Aさん
  • クライアント:B食品

状況:B食品は12月の冬に向けて、新商品「コンソメスープうどん」を販売予定。

Aさんにプロモーション提案を依頼。現段階では他の広告会社には声をかけておらず、まずはAさんの提案を聞きたいとの事。

①営業がクライアントからヒアリングする

「B食品」から連絡が入ったら、Aさんはアポイントを取りお伺いします。

打合せでは、クライアントに以下のようなヒアリングをして、ニーズを引き出していきます。

営業商談

「このうどんのターゲットとなる人はどういった人か?」

「目標の売上はどれくらいなのか?」

プロモーション企画の前提条件となる「材料」をしっかりと集めます。

営業が集めてくる情報が正確で多ければより具体的な広告に仕上がっていきます。

Aさんがヒアリングを終えて帰社後、内容を整理すると下記のような材料が揃いました。

「このうどんのターゲットは20~30代女性」
「売上目標は年間で50億円」
「競合はもっちりUDON」「寒い外から帰ってきたおうちでこれを食べて体の芯から温まってほしい」

ターゲットや予算、競合情報など情報が集りましたね。

これらの情報が、広告を作る材料となるわけです。

つまり 営業が顧客から集めてきた材料がすべての始まりであり、広告業務の根幹なのです。

②プロジェクトチームを作る

次に、Aさんは社内でチームを作ります。

なぜなら、集めた情報に対して営業一人だけで対応する事は出来ないからです。

先ほど集めた 「このうどんのターゲットは20~30代の女性」「競合は『もっちりUDON』」「寒い外から帰ってきたおうちでこれを食べて、体の芯から温まってほしい」 といった情報がチーム作りの判断基準となります。

Aさんはこの情報から、「それぞれの情報に対応できるプロは誰か?」を考えます。

「相談する仲間は誰だろう」

マーケティング戦略の役割

例えば、 「新商品のターゲットは20~30代の女性」 という情報について。

20~30代の女性といえば「SNS世代」「結婚・出産などを経験」という人物像が浮かびます。

そこでAさんは「20~30代女性の属性情報に詳しいプロを入れたい」と思います。

ここで登場するのが「マーケティング・戦略部」になります。

マーケティング部では市場分析をしており「20~30代の女性の流行り」や「彼女たちの生活パターン」といったデータを調べてます。

なので今回Aさんは「マーケティング担当」に声をかけ、プロジェクトチームに参加してもらうようお願いします。

クリエイティブの役割

では次に、「寒い外から帰ってきたおうちで体の芯から温まってほしい」という情報。

「コンソメスープうどん」 を消費者に「〇〇なシーンで食べたくなる」ような想起させるクリエイティブが必要ですよね。

「コンソメスープうどん」は初めて世の中に出てくる商品なので、何の広告もせずコンビニに陳列していても、

消費者からすると「なにこれ?」「どういうコンセプト?」といった感じで、さっぱり検討がつきません。検討が付かなければ購入には至りませんよね。

ここで登場するのは「クリエイティブ」の人たちです。

12月の寒い日、お酒を飲んだ帰り道。最後の〆が足りないなと思った時、「寒ーい日にはおうちでコンソメスープうどん♩」という広告配信が来ました。

あなたの大好きな人気女優が、それはまあ大変あったかそうな家で湯気がもわもわ立つコンソメうどんをすすりながら幸せそ~な表情をしている動画が流れてきました。

「温か~い何か〆が食べたいなぁ」と思っていた時にこの動画を見たら、思わず試しに食べてみたい、と思ってしまうのではないでしょうか?

事実このプロモーションのやり方が効果があるかどうかはさておき、このように、「利用シーンを想起」させることも、広告においては非常に重要な役割になります。

今説明した利用シーンを創る為のプロ集団が、残りの3つの部門になります。

まず一つ目は「プロモーション」の方たちです。

いわゆる、「販売促進」という領域のプロですね。

今回のこの商品、なにせ「コンソメ味をしたうどん」ですから、消費者からすると馴染みのない味で、得体がしれません。そんな商品ですから、手に取ってもらうには少しハードルがあるわけですね。

そこで今回「買ってくれたらもれなくLINEポイントをプレゼント」というニンジンをぶら下げました。LINEポイントは使い勝手がよく、今では誰がもらってもうれしいアイテムです。

で、動画の最後に、「今買ってくれたらもれなくLINEポイントプレゼント」の文言が

このように、新しい商品を出して、試してほしい、という時はこのように「景品」「特典」みたいなものを一緒につけて販売するのが主流になっており、その領域のことを「販売促進」「プロモーション」と呼びます。

「プロモーション」領域の彼らは、このような景品や特典を考えたり、イベントなども手掛けて、消費者が最後の最後で手に取って「購入」してくれる導線を考えてくれるんですね。

そして2つ目の「メディア」

先ほどの利用シーンの話で登場したメディアは一体何でしょうか。

正解はそう、「LINE」です。

「LINE」は今ではほとんどの日本人が日常的に使っている媒体で、この媒体を活用した広告宣伝はたくさんあります。みなさんもよく目にすると思います。

その中でも今回は「LINE Beacon」という機能を使い、消費者がコンビニの前を通り過ぎたときにLINE上に広告がピコピコ出るような出し方にしました。(ご存知の方いるかもしれませんが、ユニクロさんとかはこの告知方法を結構使っています。)

メディア部門の人たちは、LINEの広告のサービス機能に詳しく、具体的な活用方法を教えてくれたり、LINE社の人たちとのやり取りだったりをしてくれます。

もちろん媒体にはLINEだけでなく「テレビ」「新聞」「web」といった様々なメディアがあり、彼らはそういった媒体特徴を押さえているので、プロモーションにあった効果的な媒体情報を提供してくれるでしょう。

クリエイティブの人たちは「分かりやすく見せる・伝える」という見せ方のプロですので、「「寒い外から帰ってきたおうちでこれを食べて、体の芯から温まってほしい」 をどのように表現したら消費者に分かりやすくダイレクトに心に刺さるかを誰よりもうまく表現できます。

あなたが大好きなあの女優を「こんな家でこんな風に食べてもらう」みたいな事から「うどんの美味しそうな見せ方」だったり、はたまた「LINEポイントがもらえる!」という文言の細かい内容だったり、、そんな事を考えて形にしてくれます。クリエイティビティは専門性が本当に高いので、営業のスキルでは絶対に解決できる代物ではありません。ですのでどんなプロジェクトにも必ずと言っていいほど彼らに仕事をお願いするケースがほとんどですし、プレゼンも彼らに入ってもらう場合も多くあります。

結果営太さんは「プロモーション」の「促山さん」、「メディア」の「媒木さん」、「クリエイティブ」の「創田さん」の3人もチームに入ってもらうように声をかける事にしました。

さて、具体的な仕事の説明も入れたのでこのパートの説明は少し長くなりました。みなさんももうお気づきだとは思いますが、今回の「コンソメスープうどん」プロジェクトを成功に導くには、5部門すべてのプロに入ってもらう必要がある、と言う事がお分かりいただけたと思います。

今回は分かりやすいようにすべての部門の人が入るようなビッグプロジェクトを例にあげますが、案件によっては「営業」と「メディア」と「クリエティブ」だけで完結してしまう案件もあります。

もちろん、巻き込む人が多ければ多いほど人件費と時間が割かれますので、営業としては、「案件の規模(お金の大きさ)」によってチーム編成を考えていく必要があります。

③チームミーティングを開きキックオフ!

さて、ここから、組んだチームでどう仕事を進めていくのかのフェーズに入ります。

営太さんは声をかけた4人に対し、たとえば9月10日 13:00から1時間ミーティングを開催する旨を伝えます。このミーティングが本プロジェクトのキックオフとなり、ここで改めて具体的な案件概要をみんなに共有するわけですね。

このミーティングでは、まずは営太さんが自分で集めた情報を「誰が聞いても分かるように」しっかりと説明します。ほかの4部門の人たちからすると、この営太さんの口から出る情報がすべてで、ここから仕事が始まりますので、営太さんがここで曖昧な説明をしたり、説得力のない説明をすると他の部門の人たちは困惑します。困惑は不安を生み、「本当にこの案件に力を注いで大丈夫なのか・・・?」というディモチベーションに繋がっていきます。

なので「営業」としてはこの最初のミーティングが本当に大事。

ここでみんなにしっかりと概要を説明して、そして動いてもらう事が、プロジェクトの成功を左右する大きなファクターとなります。

慣れていない営業や、逆に効率のいい出来る営業によっては、顧客へのヒアリングする時点でほかのメンバーを決めており、一緒に顧客の元へ訪問してヒアリングしてもらうといった事で、情報に過不足がないように対応する事もあります。

さて、このミーティングの目標は「みんなに動いてもらう」という事です。ですので、出来る営業は各メンバーに対して最終的に「これをやってほしい」「ここまで調べて欲しい」と具体的な指示を出します。ただ、慣れていなかったり、入社したての段階ではまだ、「何をしてもらわないといけないのか」という事まで頭が回らないはずですので、そこは他のメンバーや先輩の営業に助けてもらいながら、各メンバーが何をするべきなのかを明確にしていきます。

今回のプロジェクトで言うと、「間毛山さん」に対しては、「20~30代の属性情報」や「競合他社の製品特徴」「市場状況」についての情報を調べ「企画のコンセプト」となる為のヒントを明示してほしい、といった内容だと思いますし、

「媒木さん」に対しては、「20~30代女性が良く使うメディアの媒体の機能情報」や「使い方」や「費用」について明示してほしい、という内容が考えられます。

このように各メンバーに役割を与え、具体的な提案準備に取り掛かれる!という所までしっかりと議論する事を実施していきます。

④提案資料の作り込み!

各メンバーに対してやる事をしっかり伝えた後は、メンバーはそれぞれ情報を集めて、みんなに提供していきます。

営業は定期的にミーティングを開くなどして進捗状況を確認したり、みんなで内容を共有していきます。

そして情報を集めながら、「提案資料」を作り込んでいきます。

顧客が得られる情報は「提案資料」と「プレゼンする人の説明」がすべてになるので、時間のない顧客がパッと観ても分かりやすい、ロジックの立った資料に仕上げる必要があります。

私の場合、資料はパワーポイントをメインに使っており、他の広告マンの方たちもそうだと思います。広告マンとして顧客へ提案をする仕事をしていきたい、と考えている人にとっては、パワーポイントのスキルというのは必ずと言っていいほど必要になってきます。

営太さんは、各メンバーから集めた情報を基に、提案資料を仕上げていきます。すべて営業が一人で資料を作ることもあれば、パートごとにメンバーに資料を作ってもらい、最後に資料同志をくっつけて完成させるやり方もあります。メンバーの忙しさによって資料作成者を決めていくことも重要になります。

資料を作り込むと同時に、初回の提案に向けたプレゼン時の段取りも決めておきます。どのパートは誰が話すのか、質問には誰が答えるのか、といった細部まで決めておくことで、当日想定外の事態が起きても対応できるよう準備を進めます。

⑤プレゼン!

情報も不足なくそろえ、提案資料も綺麗にまとめ、プレゼン時の段取りもばっちり。そうなればあとは顧客へぶつけるだけです。チーム「コンソメスープうどん」の集大成を見せるときです。

基本的には営業である営太さんが顧客へのアポイントを取り、そして当日のプレゼンの参加者を決めて顧客へ向かいます。

案件規模が大きければ大きいほど、会社からの期待も大きいですし、その分プレッシャーがかかります。大きなプレゼンの前日は全然寝れない、という営業マンも多いと思います。プレッシャーがかかればかかるほど失敗するリスクも上がるので、なるべく多くの人に参加してもらい、プレゼン中も助けてもらうよう段取りしておいた方がいいでしょう。

さて、当日「ハッピー食品」本社のプレゼンルームに入るとなんと、、「ハッピー食品」側の出席者になんと、「社長」が座っていました。。

そうなんです。広告やプロモーションというサービスは一つの案件規模が1,000万から、大きければ、うん億円という規模になります。それだけ大きなお金を使いますので、決定権を持っている人もその分相当偉い人になってくるわけなんですね。

世の中の誰もが知っているスーパー大企業であれば、社長が直々にプレゼンに出てくることはそうそうないと思いますが、それでも大きなプロジェクトになれば相当の重役が話を聞きに来る事はざらにあります。

そんな重圧に対して、自信満々に説明をするだけの準備と、胆力とコミュニケーション能力が必要になってくるわけですね。

⑥顧客が納得するまで粘り強く、提案を重ねる!

「社長」を目の前にプレゼンをするというプレッシャーの中、「営太さん」をはじめとするチーム「コンソメスープうどん」のメンバーは、準備した資料を基に立派に説明を終えました。

そこで社長を含めた「ハッピー食品」のメンバーからフィードバックをもらいますが、これがまあ、いろんな角度から、いろんなご意見があるわけです。

「LINE BeaconってLINEを開いている時じゃないと広告出てこないじゃないですか、ほんとうにリーチできるんですか?」「LINEポイントって本当に効果あるんですか?私あまり使わないのでピンとこないですなあ・・・・」「この女優さんで本当に大丈夫ですかねえ?アニメキャラとかで良い案ないですか?」

営太さんは時に「そんな所突かれても、話の論点と違うじゃないか・・!」と内心焦りとイライラを抱えながらも丁寧に顧客の質問に答えていきます。

あれだけ色々時間をかけ、「A広告社として最高の提案を準備した」と思っていても、それが顧客に刺さるかどうかはわかりません。

顧客も、広告のプロではないので突拍子のない質問をしてきますし、それだけ大きなお金を払おうとしているので必死です。本当に納得できるまで「採用」をくれる事はありません。

ただし、方向性として間違っていない提案や、本当に熱意を持った広告会社に対しては、懸念点や質問事項を再度詳細を詰めてなおしてほしいという「前向きな差し戻し」をしてくれます。 事実、一発目の提案がそのまま最終的なプロモーションとして世の中に反映されることはほとんどないでしょう。

逆に、準備をしっかりしておらず、ぼんやりした提案や分かりづらい提案をしていたらどうでしょう。B広告社やCエージェンシーといった競合とのコンペ形式であればおそらく一発の提案で終わりでしょう。込み入った質問もあまりこないでしょうし、その場合は採用の可能性は低いはずです。今回は営太さん率いるA広告社1社に対しての依頼ですが、見切られて他社に話を振られるという事態に発展していきます。

みなさんが何気なく見ている世の中のプロモーションや広告、裏で何度も何度も広告会社が提案を重ねて生み出された血と汗の結晶なのです。

広告会社が「ブラック」「激務」と言われる部分については、この提案に向けた「準備と本番」にかける時間の量が関係しているのではないかと考えています。

⑦おめでとう!採用!

何度も何度も提案しては差し戻し・・千本ノックのような形で課題の持ち帰りと提案を繰り返しながら、8回目の提案で、営太さんは顧客から「それでは、この内容でいきましょう!」という言葉を頂きました。

これが「採用」「内定」「受注」というやつですね。

何度も提案を繰り返し、苦しい思いをしながらこのお言葉を頂いたときは、何にも変えられない喜びと達成感があります。

こうして見積や注文書といった「契約」を結び、初めてA広告社の利益が生まれる事になりました。

大きなプロジェクトですので、「内定」という報告をすると会社総出で祝福してくれることもあります。

もちろん、受注をした後の、プロジェクトが完了するまでの工程もとても大変なのですが、それは別の記事でご参照ください。

こうした苦悩や喜びを経て、 「寒ーい季節にぴったり、コンソメスープでうどんで温まろう!プロジェクト」 が世の中に出る下準備が整いました。

まとめ:プロジェクト採用までの7フロー

ストーリー仕立てでプロジェクトの流れを説明していきました。いかがでしょうか。広告会社がどんなふうにプロジェクトを生み出しているのか少し理解できたでしょうか?

①営業が顧客と対峙する
②プロジェクトチームを

もちろん、今回取り上げた事例はほんの一例ですので、仕事の方法や進め方は千差万別ですが、「広告の仕事は決して一人では完結しない」という事をご理解いただければ幸いです。

次回は、採用してから、プロジェクトが世の中に出るまでの「受注後のフェーズ」についても説明していきますね!

転職活動

Posted by Tomoya