LINEはライト層に向けた体験の入り口、ネイティブアプリ×LINEの活用とは

近年、LINE公式アカウント、LINEミニアプリ、ネイティブアプリの組み合わせがビジネス戦略において重要な要素となっています。

この記事では、大手広告代理店で多くのクライアントのLINE運用プランナーを務める筆者がそれぞれの特徴と活用方法、成功事例について詳しく紹介します。

LINE公式アカウント、LINEミニアプリ、ネイティブアプリについて

まず、LINE公式アカウント、LINEミニアプリ、ネイティブアプリについて簡単におさらいします。

LINE公式アカウント

特徴:

  • LINEユーザーと直接対話できる公式アカウント。
  • メッセージ、スタンプ、カスタマイズされたコンテンツの提供が可能。
  • 大規模なフォロワーベースを構築でき、リアルタイムのコミュニケーションが強調される。

活用方法:

  • カスタマーサポートや問い合わせ窓口として使用。
  • プロモーション、セール、新製品発表のための通知の送信。
  • 顧客との対話を通じたフィードバック収集。

2. LINEミニアプリ

特徴:

  • LINE内で動作する軽量なアプリケーション。
  • ユーザーは新しいアプリをダウンロードせずに利用可能。
  • LINEの生態系を拡張し、ユーザーに追加価値を提供。

活用方法:

  • ゲーム、コンテンツ提供、サービス予約、スタンプカードなど多くの用途に使用。
  • ユーザーの利便性を向上させ、アプリのカスタマイズを容易にする。
  • LINE PayやLINEショッピングと組み合わせて決済やショッピング機能を提供。

3. ネイティブアプリ

特徴:

  • スマートフォンに直接インストールされるアプリ。
  • 高度なパフォーマンス、デバイスの機能を活用できる。
  • オフラインで使用可能。

活用方法:

  • ユーザーエクスペリエンスの最適化。
  • カメラ、GPS、センサーなどデバイスの機能を利用したリッチなサービスが開発可能。
  • ネイティブ広告、プッシュ通知を活用したマーケティング。

それぞれのユーザー遷移とターゲット母数の理解

ビジネスの観点から、LINE公式アカウントからLINEミニアプリやネイティブアプリへのユーザー遷移がどのように母数減少につながるかについて考察します。

LINE公式アカウントからLINEミニアプリへの遷移

ユーザー母数の減少

LINE公式アカウントは、LINEユーザー全体にアクセスできるため、広範なユーザーにリーチできます。

しかし、LINEミニアプリへの遷移は、アカウントのフォロワーや関心を持つユーザーに限定されます。

ミニアプリへの遷移には意志決定や手間が伴い、全てのユーザーがそれを行うわけではありません。結果として、ユーザー母数が減少します。

ユーザーエンゲージメントの向上

一方で、LINEミニアプリは特定の目的に特化しており、ユーザーにとって簡単なアクセスと使いやすさを提供します。

関心を持つユーザーが遷移することで、そのユーザーグループのエンゲージメントが高まります。

より質の高いユーザー体験を提供できる可能性があります。

LINEミニアプリからネイティブアプリへの遷移

ユーザー母数の逐次的な減少

LINEミニアプリは軽量で手軽にアクセスできるため、多くのユーザーにアピールします。

しかし、ネイティブアプリへの遷移は、さらに深い関与やコミットメントを必要とします。

ネイティブアプリをインストールし、アカウントを作成またはログインするなどの手続きが必要です。そのため、LINEミニアプリからのユーザーはさらに減少します。

高いエンゲージメントとユーザーコンバージョン

一方で、ネイティブアプリは高度な機能やパフォーマンスを提供できます。

ユーザーがネイティブアプリに遷移すると、より深いエンゲージメントが期待できます。

また、ユーザーコンバージョン率が高まり、アプリ内でのアクションやトランザクションが増加する可能性があります。

ただ、「ダウンロード不要」というミニアプリの特徴から、LINEミニアプリは自社アプリよりもライトな層を囲い込むことが可能になります。

👆の図は、上から「集客」「ライト層」「ロイヤル層」というセグメント別に、使われるツールを記載しています。

これを見ると、アプリが、ライト層をロイヤル層に育てる上で活用できるのに対し、LINEはその手前の工程となるライト層の囲い込みで有効です。

例えば、ミニアプリで友だちになってサービスを提供した後、ユーザーのエンゲージメントが高まれば、そのLINEを通じてアプリがダウンロードされる……という導線設計が実現できます。

まとめると、ミニアプリとアプリではリーチする層が異なりますので、併用は可能だと考えます。

このように、LINE公式アカウントからLINEミニアプリ、そしてネイティブアプリへのユーザー遷移は、ユーザー母数の減少という一見ネガティブな側面を持ちつつも、高いエンゲージメントとユーザーコンバージョンを促進する機会を提供します。

ビジネス戦略においては、これらの要素をバランス良く組み合わせることが成功の鍵となります。

LINE公式アカウントとネイティブアプリの連携 – ZOZOTOWNの成功事例

LINEとネイティブアプリを組み合わせた「ZOZOTOWN」の事例から、LINEとネイティブアプリの活用方法を紹介します。

ネイティブアプリとLINEの共存

ZOZOTOWNの事例では、ファッション通販サイトのネイティブアプリとLINE公式アカウントを共存させています。

1,100万人以上の友だちを持つLINE公式アカウントとECサイトの会員情報を結びつけ、100以上のシナリオに基づいて適切なメッセージを送信しています。

メリットと成功事例

  • 例えば、在庫情報やカート内アイテムのリマインダー、発送完了通知などを提供し、LINEからの通知はユーザーにとって自然で受け入れられやすいです。
  • ID連携をしているユーザーは、していないユーザーよりもLTVが10%〜20%高いことがわかっています。
  • ネイティブアプリとLINEの併用は、数値的にも効果が示されています。

スターバックスの成功事例 – LINEとネイティブアプリの使い分けと活用

スターバックスコーヒージャパンのLINEとネイティブアプリを巧みに活用したデジタル施策の成功事例を紹介します。

スターバックスのデジタル施策は、オーダー・決済・店外・エンゲージメントの4つのカテゴリに分類されます。

約930万人の会員を抱えるロイヤリティプログラム「Starbucks Rewards」がその基盤となっています。

LINEはライト層に向けた体験の入り口、スターバックスのネイティブアプリ×LINEミニアプリ活用とは (1/3):MarkeZine(マーケジン)

1.ネイティブアプリの役割

スタバはネイティブアプリをスターバックスのロイヤルカスタマー向けのプラットフォームと位置付けています。

モバイルオーダーからSTARBUCKS REWARDSプログラムの参加まで、フルサービスが利用可能となります。

ネイティブアプリは、スターバックスのファンを店舗へ誘導し、サービスを通じてエンゲージメントを高め、顧客の生涯価値(LTV)を最大化するために使用されています。

2. LINEミニアプリの役割

スターバックスはLINEミニアプリを、ライトカスタマーに向けたスターバックス体験の入り口と捉えています。

具体的に、LINEスターバックスカードの発行や、モバイルオーダー「LINE Starbucks Order&Pay」の提供を行っています。

キャッシュレスでスターバックスを利用できる「スターバックス カード」

このカードは、LINEキャラクターがデザインされたスペシャル仕様で、バーチャルカードとして「LINE」上から利用可能です。

通常のスターバックスカードと同様に、店頭でキャッシュレス支払いができ、さらに「STARBUCKS REWARDS」プログラムにも参加可能です。

モバイルオーダー「LINE Starbucks Order&Pay」

モバイルオーダー「LINE Starbucks Order&Pay」は、スターバックスのネイティブアプリおよびLINEアプリ内で提供されているサービスです。

ユーザーはスターバックスの商品を事前にオーダーし、支払いを行うことができます。具体的には、メニューから商品を選択し、カスタマイズしたり、支払い情報を登録した後、指定したスターバックス店舗で受け取ります。

これにより、待ち時間を短縮し、スムーズなカフェ体験を提供しています。

3. LINE公式アカウントの役割

スターバックスのLINE公式アカウントは、より大規模なユーザーに向けて、よりパーソナライズされた情報を提供することを目的としている。

お客様に新商品や季節のおすすめ情報を提供し、1to1のパーソナライズされたコミュニケーションを通じてブランドとの深いつながりを築き、顧客体験をカスタマイズしています。

LINE公式アカウントでは、以下の施策が行われています。

  1. 魅力的なコンテンツ提供:
    • 新商品や季節のおすすめ情報など、スターバックスの魅力的なコンテンツを「LINE」上で提供。
  2. 1to1のコミュニケーション:
    • ユーザー一人ひとりに合わせたメニューの提案。
    • 限定商品の購入や限定イベントへの招待など、1to1のコミュニケーションを強化。

ブランド深化の目的

この取り組みの主な目的は、顧客との深いつながりを築き、ブランド体験をパーソナルで価値あるものにすることです。

LINEを入り口として、スターバックスは温かみあるコミュニケーションを実現し、一人ひとりのお客様に合わせたサービス提供を通じて、顧客エンゲージメントを高めています。

ブランドとのつながりをより深いものに

スターバックスのアプリ×LINE活用まとめ

なぜスターバックスはLINEでこれらの機能を提供しているのでしょうか?その理由は、LINEを利用することで多くのユーザー障壁を克服できるからです。LINEでは数タップでカードを発行し、会員登録も不要です。

これにより、多くのユーザーが手軽にスターバックスのサービスを利用でき、サービスを知ってからネイティブアプリへの移行を促進できる狙いがあります。

スターバックスの成功事例から、LINEとネイティブアプリの使い分けと活用方法を学びました。

ネイティブアプリはロイヤルカスタマー向けに高度なサービスを提供し、LINEは新たな顧客層に手軽にサービスを紹介する役割を果たしています。

ビジネス戦略において、適切なプラットフォームを選択し、ユーザーエンゲージメントを最大化することが成功の鍵です。